職人の弟子歴6年の私が職人に向いてると思う人の特徴5つ

 

職人に向いてる人と聞いて、皆さんはどのような人物をイメージするでしょうか。

手先が器用で黙々と仕事に打ち込む集中力があり、三度の飯より物作りが好き…。

上記のイメージは手先が器用という一点を除いて大体その通りです。

 

三度の飯の間も自分の作ってるものが頭を離れなくて、ああしたらどうだろうこうしたらいいんじゃないかと絶えずアイディアが浮かんで、それを形にしていたら知らない内に時間が過ぎている…。

そんな人なら手先が器用じゃなくてもいつのまにか上達してしまうので、手先の器用不器用はそこまで大事ではないんです。

 

なので今回、今まで書いた部分は最低源クリアしているものとしてお話をすすめます。

前置きが長くなりましたが、ここから本題です。

私は今年で職人の弟子歴6年になってるのですが、こういう人は職人に向いてるなーと思った人の特徴を5つご紹介します。

 

100%私の体験からなる独断と偏見なんで、弟子みんながそうってわけじゃないです。

もしもこれから機会があったら誰かの下について弟子やってみたいなと思ってる人とかいたら、ふーんって思って読み流してください。

 

 

(1)接客が好き

もうこれは物作りが好きと同列に置きたいくらいの絶対条件です。

輸入物やプラスチック製品がまだ普及していなかった時代は職人から物を買い、販売店に入れてくれていた問屋制度がしっかり成り立っていました。職人は仕事場で物だけ作っていれば食っていられました。

しかしネットが普及しお客様が世界中どこにいても製造元と直接やりとりをし品物を手に入れられるようになったことで、問屋はその機能を失いつつあります。ちなみに私の業種は失いました。

販売は色々な方とお会いしますし売り場のルールなどもありますので、たまに難しいこともありますが、悪いことばかりかというとそうではありません。

職人自身が直接お客様とお話する機会がある事で、要望を反映したり時代の流れを汲んだ品物を提案出来るようになったりもしているからです。

お客様だけでなく販売先の規模によっては販売員さんから、こんなのないのーとアイディアを頂くこともあります。

さらにこれはごく稀にですが、最初はお客様と販売員/職人の関係だったところから思いもよらぬ友情や仕事が生まれたりもします。

ネット販売も良いですが、まずは一度対面販売の経験をしてみることをオススメしたい由縁です。

そんな一期一会を楽しめる人は職人向きです

 

(2)向こう3ヶ月は無収入でも暮らせるだけの貯えがある

これは職人というより弟子の期間に大きく関わるんですが、職人って個人事業主なので先の保障が本当にありません。大体の場合保険もありません。

例えば弟子の年季は○年でその間毎月○○円は給料だかお小遣いだかで渡しますよって約束して弟子入りしたとします。

でも師匠が体壊して仕事出来なくなって、修行どころか仕事どころじゃなくなった上、取引先に撤退され師弟共に無職状態に陥るというケースが実際身の回りでありました。

そうなってしまった時に、自分の修得した技術がまだとても市場に商品として出せるレベルに達していなかったとしたら、明日からどうやって生活しようとなるわけです。

転職活動をするとして、すぐに決まればいいかもしれませんが、似たような業種を志すとしたらなかなか狭き門になります。

万が一に備え、

・出て行く固定費は最低限に抑えること

・向こう3ヶ月無職でも暮らせるだけの貯えがあること

は非常に大切です。

弟子をしながら貯めようと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、はっきり言って弟子は丁稚奉公と変わりません。労働基準法にも守られないものと思って頂いた方がいいです。全部が全部ではないと思いますが、とてつもなく薄給です。

修行をしながらアルバイトをして心と体のバランスを崩してしまったケースも見てきましたので、なるべくなら修行開始前にまとまったお金を用意しておくと良いと思います。

年季があけて独り立ちが決まるとそれまで師匠に依存していた道具や材料を買いそろえる必要があったり、何かと物入りなのでそういう面でも役立ちます。

ちなみに借金は論外です。

 

(3)紙の新聞を一日一度は読む

これはふつうの社会人にも言えると思いますが、職人にとっても紙の新聞は大事。とても大事です。

最悪配信版でもいいですが出来れば紙の方がいいです。梱包材がない時助かるし。

なぜ紙でなければならないのかというと、ネットニュースだと自分の興味のあるページにしかアクセスしないからです。

自分と同年代の人との交流がメインの場合はそれでいいかもしれませんが、接客をしていると様々な年代や業種のお客様と出会うことになります。

出会う人の数だけ関心の対象はありますので、紙の新聞を読んでおくと、どの時事を交えたお話になっても直ぐに反応が出来ます。

この知識の貯蓄は修行時も独り立ちしてからも、多分転職したとしても、ほんっとに役に立ちます。

また社会面や経済面だけでなく文化面にも目を通して見ると見逃していた展示やイベントの情報が飛び込んでくることもあります。

仕事にどっぷり浸かってしまうとどうしても視野が狭まりますので外に出かけるきっかけにもなります。

もちろんネットで即効性の高い情報を集めるのも、本でもっと深いところまで探るのも大事だし楽しいですよ。

 

(4)異業種の友達が多い

自分は職人だからと他の人間関係を断ち切ってしまう人がたまにいますが、これはあんまりよくないんじゃないかなぁと思ってます。

お仕事変わられたそうなので掲載許可を頂いて書きますが、以前SMクラブのS嬢様から漆塗りのマスクが欲しいと言われて塗ったことがあります。

漆製品は縄文時代その独特の光沢から祭祀の道具として使われていたという説もありますが、ステージで怪しく光を反射するマスクはなんとも言えず素敵でした。

毎日決まったものを作るのも楽しいですが、想像を超えた依頼を実現するために頭を悩ませるのもまた楽しいと思わせてくれた経験でした。

世界には色んな方がいるので、どんなお仕事の方が自分の技術を欲しているかは分かりません。可能性を限らないためにも、積極的に色んな方と関わることをオススメします。

時間とお金は大変かもしれませんが人生の財産になる出会いもきっとあると思います。

 

(5)師匠が好き

もうこれは文字通りです。

色んな方がいると思いますし人間的に合わんという場合もあるでしょうが、技術は心から尊敬できると思う人のところで学んだ方が良いかなぁと思います。

ただ年齢が上だから敬えという話ではなく、弟子をとろうとまで考える師匠は大体がしっかり身につけた技術で何十年も食べてこられている人です。

そしてここに来るまでに様々な修羅場を乗り越えて来ている人がほとんどです。若輩者との最大の差はそこだと思ってます。

お互い言いたいことをきちんと言い合える関係を築いて置けば、技術面や経営面で分からないことが出てきた時に相談に乗ってもらえたりします。

 

 

以上5つが、私が経験から思う職人に向いてる人の特徴です。

最後まで読んで全部わかっとったわって思われたらお時間泥棒すみません。

色々書きましたが最終的には本人次第だと思います。簡単な世界ではないですが、頑張り抜いたら面白みもやり甲斐も必ず見つけられる世界だと思うので、無茶しない程度に職人ライフ楽しめるといいですよね。

 

この記事はこれからも何か思い出したら追記します。

 

 

 

はじめまして職人の弟子です

はじめまして。都内で職人をしているmaryと申します。

前々からツイッター等でご存知頂いてる方もおられるかと思います(本当にありがとうございます)が、漆を塗る職人をしております。

 

簡単に自分の業務内容を紹介すると、師匠の工房に所属する工人として制作と販売を行っています。

蒔絵や沈金といった黒地に金の模様が映える華やかな作品ではなく、下地が固く丈夫で長く持つ日用品を作り、月に一度程度は百貨店等で一週間の期間限定出店をし販売をしています。

自分で作り売った品物で頂いたお給料メインで生活をしているので、今のところ職人と名乗ってもいいかなと思ってます。

 

なぜ今のところという曖昧な表現なのかというと、実は今年度で正式に修行期間が明けることが決まり師匠の元を離れることになったからです。

独立してからが職人としての本当のスタートになるんだろうというもの思いはさておいて、師匠の下について丸6年間弟子という特殊な立場を経験したのでせっかくなら残しておきたいと思ってブログを立ち上げました。

 

私は2012年1月に東京に出てきました。

まだ大学在学中でしたが、卒業論文は終わっていたので友達の家に泊めてもらって通いました。

技術を学ぶのだと意気込んでいた私ですが、一番最初に出勤場所として指定されたのは神奈川の百貨店でひょえーってなったの覚えてます。

休憩室とレジの場所を教えられ、次の瞬間

「若いからすぐ覚えられたよね!じゃ売って!」

って言われて更にのけ反りました。

接客は喫茶店でしか経験ないって履歴書に書いた気がするけど?!OJTは?!

技術も接客も、一事が万事手探りのトライアンドエラーでスキルを身につけていくのが職人なのだと理解出来たのは、ここから3年ほど後のことです。

 

上手くない説明ですが、今はただいいもの作ってれば誰かが売ってくれるって時代じゃありません。

自分で作れるのはもちろん、自分で売りこみ方を考えられないとやっていけない世界です。

それでも職人になりたいという人の一助になれば幸いです。

 

また書きます!